「マチュー! こんなことになって……! 大変だったのではなかったの? 何があったの?」

「ソニア様……」
 
 近付いて自分を抱き締めるソニアにマチューは一瞬驚愕したが、たちまち目に涙を浮かべながら嬉しそうに首を横に振る。
 
 そして、優しくソニアの身体を離すと、彼女の瞳から流れる涙を拭いながら言った。

「少々、一度に色々と面倒な事が起きましてね……。でも、もう大丈夫でしょう。――ソニア様がクリスフォード様をお連れして帰って来られたのですから」
 
 そうマチューはクリスに視線を向けた。
 
 二人は何かを語り合うかのように見つめ、頷きあった。
 
 何が何だか分からないソニアだったが、気を取り直し背筋を伸ばす。

「話を聞きたいの。一体この城の惨状はなんなのか。そして何が起きたのか」
 
 女主人としての初めての仕事だった。