アーチ型の天井のステンドグラスから、柔らかな光が射し込む白い石の渡り廊下を歩く。
 季節は春に入り、教会の薬草園にも香りに誘われて蝶や蜂が忙しく飛び交っていた。

「君の結婚相手が決まった」
「ぇっ?」
 
 唐突に告げられソニアは立ち止まり、ポカンと小さな口を開けてパトリスを見上げた。
 
 そんなに驚くとは思わなかったパトリスは、苦笑いしながら話を続けていく。
「君はもう十七だよ。婚約者がいたっていい年頃だ」
「……申し訳ございません。あまりに急な話だったので……」
「もしや、気になる人がもういるのかな?」
「嫌ですわ、ここは女性達の園。陛下以外に、この寄宿舎学校の中に入れる男性の方はいないと言うのに」
 
 ムウッと膨れたソニアを見てパトリスは「ああ、そうだったね」と笑った。

「それで……その方は私の知っているお方なのでしょうか?」
 ソニアは胸の鼓動の早さを感じつつ、平静に尋ねた。
「ああ、知っているよ」

 キュッと胸もとで手を握り締め、じっと自分を見つめているシソニアの期待を込めた眼差しをパトリスは受け止める。

「私の息子――セヴラン……」
「――セヴラン様?」
「そう、セヴランの――」
 
 ああ、とソニアの目が潤み、頬をおさえて喜びに顔が輝く。

「セヴラン様の! 嬉しい! パトリス王、私、良き妻になれるよう努力しますわ!」