◇◇◇◇
 
 朝日が地平線から顔を出し、穏やかに地上を照らし出してからしばらく――。
 
 のんびりとした田舎道を進んでいた馬車が、クリスの命によって止まる。

「さあ、姫君。ここから少々歩きますが、気に入るかと思います」
 そう言いながら再び手を差し出す。
 
 ソニアは一瞬ためらったが、思い切ってクリスの手に振れた。
 
 ――何ともない
 
 ソニアは心底ホッとし、彼の誘導で馬車から降りた。

 
 クリスの手に引かれ、なだらかな丘を上がっていく。
 
 ソニアはそれだけでもワクワクしていた。
 自分の知らない、未知の世界に踏み込んでいく感覚。

「姫君は、知らない土地を踏むのに怖くはありませんか?」
 
 鼻唄まで口ずさみそうに弾んだ足取りでいるソニアを見て、クリスは尋ねた。

「ええ! ちっとも! この先に何が待ち受けているのかと想像すると、とても楽しいです」
 
 そう答えたあと、ちょっと困ったように眉を寄せる。