ソニアは、急いで手荷物の小さな鞄からロザリオを出すと、首に掛ける。
 
 すると、確かに気分が落ち着いてくる。
 清涼な風が身体を取り込んでいるように感じられ、ソニアはホッと安堵の息をついた。
 
 それを見たクリスもホッとした様子だ。
「姫君、ではお休みなさい。良い夢を」
 
 そう挨拶をして出ていこうとするクリスに、ソニアは走りよった。
「クリス様!」
 
 手に触れようとしたが、毛深い甲が目について思わず躊躇する。
 それに夕方の時のような激しい静電気が起きるのも怖い。
 
 躊躇っているソニアにクリスは笑いながら首を横に振った。
「気にしておりませんよ」
と彼女の気持ちに気付いて、慰めるように言う。
 
 そんな包むような彼の優しい態度は決して嫌いではない。
 そう感じるのに何故、怖いのだろう?

「ありがとうございます。お休みなさい」
 
 ソニアはそんな自分の罪悪感を隠しながら、感謝を込めてクリスに微笑んだ。