(つ、疲れた……)
 
オープン式の馬車に揺られ民衆の視線に、にこやかに手をふって応える――堪えるわ

(……ああ……。つまんない冗談が頭を巡るわ……)
 
今日の結婚式の準備が、こんなに大変なものだったとは。

想像が甘かったとソニアは反省していた。

――いや、自分達が想像していた結婚式は昔の流れそのままに数人の参列者と司祭の中、主城であるクレア城で厳かに行い、それから数日間、宴会を開いておしまい――の筈だった。
 
――なのに王家と中央教会が

『世紀の英雄同士の結婚なのに、そんなひっそりと行うつもりか!』

と横やりを入れてきたのだ。

(資金も援助しないくせに……)
 
このオープン馬車、王に売り付けよう。

とソニアは笑顔の裏で、早速クレア家の主人として財産の計算をしていた。