二人しばらく泣き笑いをしていたが、落ち着いた頃、徐にクリスがソニアの目頭を擦り始めた。
 
――ああ、涙を拭ってくださっている。
 
恋人同士のようで、何だかこそばゆい。それでも嬉しくて、ソニアはされるがままでいた。
 
ふいにクリスの顔が近いことに気付いた。
 
ある予感にソニアは、そっと瞳を閉じる。
 

――が

「……続きは後にしましょうか。後ろから沢山の視線を感じますので」
 
ソニアは、クリスの背中越しに目を開けて薄闇の向こうを眇め見る。
 
――そこには様々なアイマスクをつけた男女数人が、こちらを見ながらにやついていた……。
 
王に王妃。それに王太子に王太子妃。そしてセヴランだ。


「……王家ファミリーで何、覗き見しているのです……?」
 


恨めしそうにクリスが呟いた。