<―― !>
 
 バフォメットが気付いた時には遅かった。
 
 蓋が開き、パメラめがけて化粧水が飛沫をあげる。

 <何をする!>
 
 ソニアの理解できない行動に批難する言葉と、空を切り裂く悲鳴が響いた。

「パメラ!」
 
 ソニアはパメラに飛び付き、その柔らかな身体を抱き締めた。
 
 絶対に離さないというように強く。

「パメラ!  目を覚まして!  負けないで!」

 <ぅうっ……!  クレア家の娘!  貴様、聖水を身体に付けて! 離せ、熱い!>

  肉の焼けるような臭いが、ソニアの鼻孔を刺激した。

 <止めろ、離せ!  この娘の身体が焼けるぞ!>
 
 もがき苦しみながらソニアに訴えるが、彼女はますますしがみついた。

「焼けて苦しいのは、パメラじゃないわ!  パメラの身体の中にいる貴方よ! これはパメラが作ってくれた物よ!  自分で火傷するようなものを作るわけがないわ! ――パメラ! 聞いて! 私、貴女が大好きよ!  貴女に嫌われていても良い!  これから友人として付き合えなくても良い!  貴女が嫌いでも私は……貴女を嫌いになれない! だって、貴女がいてくれたから私は救われたんだもの!  今度は私がパメラを救いたいの! ――パメラ、目を覚まして! 助けるから! 絶対に助けるから!」
「ソ……ニ、ア……」
 
 パメラの声だ。

(パメラ、パメラ!)

「負けないで!  負けないで!  悪い奴等を追い出して!」
「私、もソニアが……だい……好き……」