「ソニア様、それは何故お持ちに?」
 
 ソニアが、大事そうに手にしている小瓶をクリスは指し示す。
 
 覚えがある小瓶。
 
 彼女が修道院で休んでいる時、自分が教会から「ソニア様に」と預かり、手渡した物だ。
 
 確か、パメラが化粧水に香りつけをし、シスターがそれを聖水としも使用できるように中央教会に依頼した物だ。

「はい」とソニア。
「何かの役に立つかと思い持ってきました。私の身体にも付けています」
 
 クリス様も、と促され手に付けてもらう。
 
 クリスのゴツゴツした剣だこのある指に、甲や指の付け根にびっしりと生えた体毛。
 
 触れても、今は全然怖くない。

「……私がクリス様の髭や体毛が怖かったのは、クリス様が呼んだ『ファーンズ司祭』が私に憑いていたからなのですね?」
「はい」
 
 クリスが頷いた。

「ファーンズと言う人が、クレア家を呪っていた司祭なのですね?」
「……はい」
 
 ギュッとソニアに手の甲を抓られ、クリスは「おう!」と手を引っ込めた。

「最初にお会いした時に、お話しくださったら良かったのに……」
 
 ソニアは、プッと頬を膨らまして不満を漏らした。