馬の闊歩する音を聞きながら、揺れる馬車内でソニアは泣きたくなるのを必死に堪えていた。
 
 ――どうして?

(私は泣きたくなるほど、こんなにも髭を嫌悪するのかしら?)と。

 
 


 クリスフォードは小さく肩を窄めてしまった少女に、どうしたら良いか手をこまねいているばかりだった。


(これもお役目だ。申し訳ありません、姫君)
 
 
 心の中で謝っていた。