カトリーヌはクリスがいる手前、どう言おうか手をこまねいている様子だ。
 
 口をパクパクと動かして、なんとも落ち着かないでいる。
 
 その姿を見たクリスはカトリーヌに
「貴女が、真実にセヴラン様を愛している、と言うならセヴラン様と作った賭博の借金の返済に渡した金を、パトリス王にお返ししなさい。そして二人で借金を返していきなさい。――それは出来ない。夫君と泣き付いてきたではありませんか。だからセヴラン様とは会わないという条件のもと、手切れ金としてお渡ししたのですよ?」  
 それからクリスは、セヴランに向きなおす。

「セヴラン様もです。貴方が自由に使えるお金が無くなったのは、賭博の借金にあてたからです。自業自得の所業にソニア様を巻き込もうとし、あまつさえ彼女の財産まで狙うとは―― ! 幼馴染みの姫に悪いと思わなくなるほど落ちたのですか!」
「……」
 
 黙りこくった二人を見てクリスは

「カトリーヌ様はもうお帰りください。夫君には後から連絡が行きましょう。たっぷりと説教されなさい。もう屋敷から出してはもらえないかも知れませんね」
 
 そう言い捨てる。

「セヴラン様は私と一緒に……。貴方も共にお話をしなくてはなりませんよ……」
 
 クリスは静かにそう言うと、ソニアを見つめた。