厳しい口調がカトリーヌを直撃する。
 
 彼女の肩がビクリと上がり、忌々しそうにその声の主に振り返った。

「……クリス様」
 
 その者の名を呼んだのはソニアだった。
 
 クリスは、口も聞けず呆然としているセヴランを避けて、ソニアに近付くとカトリーヌの前に立ちはだかる。

「夫君からの注意では、よくお分かりにならなかったようですな?  王直々に叱咤された方がよろしいか?  そうなれば、夫君共々に厳しい処分が下されますぞ!」
「な、何を仰るのやら……!  わたくしはただ、ソニア様に王宮の礼儀や、今流行りの遊びを教えて差し上げようと――」
「貴女に教えてもらわなくても結構です。――それより、夫人。貴女は確か、しばらくは王宮の出入りを禁じたはずですが……?」
 
 口調よりさらに厳しい眼差しが、カトリーヌを固まらせる。
 
 その問いに答えたのはセヴランだった。

「……僕が招いた。城外に出ると監視の目が厳しいから……王宮のこうしたイベント中なら、誤魔化せると思ったんだ」
「セヴラン様、父君であるパトリス王のお声が届かなかったようですな」
「カトリーヌが既に人の妻であることで反対なら、くそくらえだ!  僕は彼女を愛してる。彼女と一緒にいたいんだ!」
 
 そう切実にクリスに訴えるセヴランだが
「だけど」
と、視線をカトリーヌに移す。

「……彼女は遊びだと……嘘だよね? この場をしのぐための虚言だよね?」
 
 そう訴えた。