◇◇◇◇
 
 王立中央教会――
 
 王宮の賑やかな音楽や人々の楽しげな笑い声は、ここまで来ると流石に届いてこない。
 
 あるのは淑やかで落ち着いた静寂。
 
 クリスは神台の前に跪き、一心に祈りを捧げていた。
 
 願いは一つ――

「クリスフォード様、お待たせしました」
 
 教皇がチャペルの奥の部屋から出てきて、クリスに声をかける。

「いえ、私もしばらく長い祈りを捧げる時間が取れなかったので……良い清めとなりました」
 
 クリスはそう言いながら立ち上がり、教皇と向かい合う。
 
 教皇の両腕に、大事そうに抱えられた物に注目する。
 
 司祭服に使われるような、金色の高貴な布にくるまれた長い品物だ。

「これが例の……?」
「はい、クレア家の先々代の当主であったウィリアム様と懇意にしていた先代教皇が、お造りになった品です」
 
 お受け取りください、と差し出されクリスは恐る恐る手にする。

「拝見してもよろしいかな?」
 
 教皇が頷いたので、クリスは丁寧に布を外していく。