はしたなく全速力で走ったせいで息切れが酷い。息を整えながらゆっくりと足を進めていく。
 
 ひゃっくりが出るほど泣くのは、何時くらいぶりだろう。
 
 ソニアは一人回想する。

(確か、一番下の兄が亡くなったと訃報をもらった時だわ)
 
 とうとう一人ぼっちになってしまった悲しみと不安。
 
 自分は、これからどうしたら良いのか。
 
 どう、生きたら良いのか。
 
 何を生きがいにしたら良いのか。
 
 まるで右も左も分らない荒野に、一人取り残された気分でいた。
 
 誰の手を取ったら良いのか。誰に助言を乞いたら良いのか。
 
 誰にこの、言いようの無い悲しみを訴えたら良いのか――修道院にいて、神に教えを乞う身でありながら。 
 
 しかし、現実には神はただ微笑むだけで自分に手を差し伸べてくれる訳ではないし、抱き締めてくれるわけでない、目の前にいる偶像は象徴なだけだ。
 
 幼かったソニアは最初に両親を事故で亡くし、すぐに修道院に入れられたことで『祈る』ことだけでは到底、癒すことが出来ない傷を負っていた。
 
 温もりが欲しい。

 ただ、抱き締められるだけで安心できる相手がこの世から消えて、まだ幼かった彼女は、冷たく白く滑る像にそれを求めても実現は無いと身体が知っていた。

 
 泣いて泣いて泣いて――共に泣いてくれたパメラ。