一通り話が終わり、セヴランは「うーん」と低く唸って首を傾げるとしばらく考え込んでいたが、思い切ったようにソニアに顔を向けると口を開いた。

「クリスは実直な奴だから、正直に気持ちを伝えたんだろうと思う。だけど、ソニアを傷付ける為ではなくて、率直に君のためなんだろう」
「婚約者に浮気を勧めることが?」
「浮気を勧めたわけではないと感じた。ただ、君にとって、結果的にはそう感じる語源があったんだろうね」
「……随分、肩をお持ちになるのね。やっぱり剣のお師匠様だからですか?」
 
 ソニアのふくれた顔を見て、セヴランは肩を竦める。

「彼とは長い付き合いだから、嫌でも知っているだけ。――今は付き合いないけど」
「彼が私の元にいるせいで?」
 
 違う、とセヴランが肩を竦めたまま首を振った。

「それ以前から交流がない。僕が嫌になったんだ」
「……えっ?」
 
 何が嫌になったのか、聞き返さずにいられなかった。

「そんな真剣な顔をしないで。クリスが嫌いになったわけじゃないから」