(クレア家に関する事を聞きたかったけど、仕方ないわね。生誕祭の途中で、お尋ねできるかもしれないし)
 
 そう頭を切り替えて今夜のために入浴して、念入りに身体を磨くことにした。

「みんなも手伝ってね」
 
 お付きの侍女達が「はい」と張り切って袖をまくる。

「ソニア様の社交界デビューですからね。どこのご令嬢にも負けないお支度をしましょう!」
「勿論ですわ! 腕が鳴りましてよ!」
「うちの姫様が一番ですからね! それを周りのご婦人や紳士達に知らしめないと!」
「……えっ……と……?」
 
 ジリジリと迫り来る侍女達の、熱の籠った気迫に逆にソニアが狼狽える。

(このやる気はなんなの!)
 
 思わず後退りするソニアに、侍女達の殺気ばった微笑みと共に両腕、背中を押さえつけられ、素早く室内着が脱がされた。
 
 その早さにソニアはただ驚く。

「――女の戦いは既に支度からはじまっているのですよ! ソニア様!」
「心しておかかりあそばせ!」
「目指せ、王宮のマダムロワイヤル!」
「えっ? ええええと……私まだ結婚はしてないから……マダムじゃ……」
 
 問答無用だった。

 
 ――恐るべし、矜持をかけた淑女達の戦いは侍女達の戦いでもあったのだと、ソニアは身を持って経験した。