「クリス様、セヴラン様とお会いできなくて残念でした?」
 
 自分の手前、無理しているのでは? と気になってソニアは尋ねてみた。

「王宮で顔を合わせますから、特に」

 と素っ気なく言い返してきたが――

(空気が痛い! 刺さってくる!)
 
 明らかに怒りが籠った波状がただ漏れして、ソニアに刺さってくる。

「セヴラン様と仲違いをしていらっしゃるんですか? もしかして」
 
 ソニアの言葉にクリスはウーン、と首を傾げる。

「仲違いするもなにも、私が何を言ってもセヴラン様はどこ吹く風ですし、近頃は逃げ回っておりますからなあ……」
「セヴラン様は、今は何の役割を担っていらっしゃるんですか?」
「特に何も……強いて、苦しみ紛れに、どうにか役職を述べよと言われれば『女性接待係でしょうか?」
「……成程。だからあのように、お洒落に気を使っていらっしゃるわけですね」
「お洒落と女性との娯楽に、早くから目覚めてしまいましてね……。元々、端麗なご容姿でいらっしゃいましたから……王宮に出入りする女性達にかどわかされるのも早くて。――王太子のようにしっかりと分別がつくお方ではなかったのです」
 
 ――そう言えば、幼い頃遊んでいて、自分から意見を言うことは少なくて何か言っても

『うん、良いよ』
ってニコニコ同意していた。

(主体性が無いから、周囲に流されて今現在の彼が出来てしまった……わけ?)

「自分がやりたいことや己の使命に気付いたら変わるだろう、と王がおっしゃっいましてね」
 
 呆れ果てているけど、どうしようもないからしばらく見守っていこうか――という心情か。