だがセヴランは、そんな女性達のシビアな視線に慣れているのか、それとも自分のセンスに自信があるのか――悠然とソニアに近付いていく。
 
 そして、一輪の赤い薔薇を差し出した。

「父から聞いてね。再会を楽しみにしていたよ。――なのに、事故に病気とトラブル続きで王宮に来るのが遅れると聞いて、お見舞いに来たんだ」
 
 受け取った赤い薔薇には、銀の刺繍が入ったリボンが結ばれていた。

「既に父から見舞い用に大きな花束をもらっただろうから、僕は一輪に思いを籠めて」
 
 ね? と軽く片目を瞑って見せるセヴランは、仕草が自然で嫌みがない。
 
 その姿と合っているものだから、ソニアも傍らに控えている侍女のようにポーッと見惚れてしまった。

「あ、ありがとうございます。久しぶりに会えたというのに、このような姿で申し訳ありません」
 
 我に返って、慌てて寝台から出ようとするソニアをセヴランは

「良いよ、このままで。どんな姿でいても可愛い人は可愛いままさ」
と、自ら毛布をかけてやる。