ソニアはある可能性に気付き、クリスに恐る恐る聞いてみた。

「もしや、将来を誓いあった女性がいたのに王の命令で、泣く泣く別れたとかではありませんか……?」
 
 彼は王宮に仕える騎士だ。
 
 王宮内で働く女性の中に、結婚の約束をしていた人がいたかもしれない。
 
 その彼女に操をたてているとしたら――何て罪作りなことをしてしまったのか。
 
 だがそんなソニアの心配も杞憂だったのか、クリスがブンブンと音が出るほど首を振って否定した。

「そのような女性がいるなら、例え王の命令でも拒絶しております」
「……本当に? 無理はしておりませんか?」
 
 再び疑心の眼で見つめてくるソニアに「まいったなあ」と言わんばかりに、クリスは短髪で刈り上げた頭を掻いた。