蝉が私を急かすかのように鳴く。
 生ぬるい風が私を惑わせる。



 でも、私は進みたい。
 今すぐじゃなくていい。春真くんのペースでいいから、一緒に進みたいから。




「春真くん、前に言ってたよね。素直で純粋だから人を傷つけるって。だから距離を置くって」




 緊張が走る。




「言いました」


「それ、いつまで続けるの?」




 私は今、嫌なことを言った。



 春真くんはびっくりして立ち止まってしまう。
 だから私も振り向いて、春真くんの言葉を待った。



 揺れる瞳が、責められた子犬のように迷い悩んでいる。
 言葉を探す余裕なんてない。ただ、痛いところをつかれたといった感じ。




「いつまでって……」