それきり、私たちは沈黙してしまった。
怒っているとか、言葉を探しているとか、そういうのではなくて。ただ、黙っていた。
私たちの沈黙に入り込んでくるのは、蝉の声。どこかで騒ぐ生徒の声。微かに聞こえる電車や車の音。
思った以上に賑やかで、生きていることを実感してしまう。
「ありがとうね、夏海」
「私?」
「わたしのためにしてくれたんでしょ? それに生徒会長……冬弥さんを守ってくれて」
「どうなのかな。自分のためかもよ?」
「だとしても、わたしは救われた。夏海が友達で本当によかった」
沈黙は、雪乃の言葉と笑顔によって破られた。その一方で泣いている私。
本当は怖かった。
相談もなしにあんなこと言って、雪乃に嫌われるんじゃないかって。



