「男と一緒にいてさ。夏海はなにもわかってなかったんだなって。友達とか恋人とか、そういうどっち付かずの付き合いしてるんだろうなって思ったら、あの日の俺と重なって惨めになった。だから冷たくして」
「私は酷いやつだから……」
「違う! 俺が、あの日……夏海と遊びたくないって言ったあの日!」
カランとグラスの中の氷が音を立てて、1度疾風の言葉が止まる。
真っ赤になった疾風の顔。
エアコンがきいた部屋なのに、首筋を流れていく汗。
小刻みに揺れる腕に、私は怒っているんだと勘違いしていた。
「本当は、その関係を続けたかったんだ。でも俺はバカな友達の言葉を真に受けて、本当は夏海が好きなのに。離れるって選択して……」
「え、え?」
「こんなに好きなのに友達としか思ってくれないって、嫉妬して勝手に怒っただけなんだ。だから……ごめん」



