でも、どうしてかこの間のような冷たさはなくなっていて、まるで昔に戻ったかのような優しさが彼を包んでいる。
懐かしい。
そんなふうに思うのはおかしいのかも。
ただ1つ言えることは、まるで雰囲気の違う彼の姿に油断していた。謝るタイミングを見失って呆然としてしまった私は馬鹿だ。
「ごめん、夏海」
そして逆に謝られて、私はやっと我に返ったんだ。
「疾風。私、私ね……」
「こんな所で立ち話もなんだし、中に入って」
「え?」
「夏海さえ、よければ」
ドアを全開にした疾風が誘う。
何の考えもなしに、
「お邪魔、します」
そう言っていた。
久しぶりに入る疾風の家は、あの頃と変わらない匂いがする。
でも少しだけの緊張が、他人の家の匂いを強めて鼻を掠めていく。
「いらっしゃい」
私が中に入ると、疾風はすぐにドアを閉めて私をリビングに案内してくれた。



