「私ね、新入生の子を助けたの。純粋で優しい男の子。その子を見ていたら、無理やり女らしくなろうとしていた自分が許せなくなってやめた」
「それで最近、髪を切ったんだな」
「うん。彼は友達になりたいって言ってくれた。私もすごく嬉しかったんだ。私、女なのに仲良くしてくれるんだって思ったら嬉しくて……」
多分、あの時は普通だったんだ。
好きな気持ちはあったと思うけれど、まだそこまで深く想っていなかった。友達としての好きが多かったんだと思う。
「でもね、おかしいんだよ。友達になれて嬉しかったはずなのに、気づいたら友達じゃ嫌だって思ってて」
「恋心?」
「雪乃にもそう言われて。恋してるってことを理解したんだよ、1度は。それが怖くて、そんな自分が気持ち悪くて。恋して、気持ちが友達じゃなくなったら、一緒にいられなくなるって思ったら怖くて」



