まさかの事実に開いた口が塞がらない。蛍兄、もしかして心配してくれていたのかな。
私、なんだか悪いことしちゃった。
あとで、ちゃんとお礼言わなきゃ。素直に言えるかはわからないけれど。
「で、さっき聞こえていたかどうかはわからないが。夏海、なにか悩んでるのか?」
「涼兄もそれ聞く?」
「蛍が好きな人がいるとか言っていたけど」
言いやがったな、クソ蛍。乙女の気持ちをこんなにあっさり言うなんて、口が軽いにも程がある。
「涼兄はさ、好きな人いないの? 結婚したい人とかいてもいい年齢じゃないの? あっという間に三十路になっちゃうよ?」
誤魔化されたことがわかったのか、涼兄が軽く私の頭を小突く。
「好きな人くらいいる」
「嘘!! あいたたたた……」
「……突然、起き上がるな」



