そんなことを思っているうちに、蛍兄が玄関のドアを閉める音が聞こえた。漫画のためなら行動が早い。
「で、夏海」
涼兄が私の額に手を置く。ひんやりして気持ちがいい。
「熱はまだあるな。明日も休んだ方がいい。その後は土日で休みだし、月曜日に行けるように体調を整えろ」
「うん、わかった」
部屋で着替えもせずスーツ姿のままでいる涼兄は、私から見ればすごくカッコよくて逞しい。
上着を乱暴に脱いでネクタイを外すと、いつもの涼兄になった気がして安心する。
「プリン頼めばよかった」
「言わなくても蛍なら買ってくるだろ」
「そうかな。なんだかイラついてたし、睨まれるもん」
「そうか? あいつ、夏海が倒れたって会社に電話してきたんだぞ」



