「涼兄、お帰り?」


「なぜ疑問形だ」


「時間の感覚がわからなくて。今、夕方?」


「おやつ時だな」


「……意味がわからない」




 仕事はどうしたって言いたいけれど、大好きな涼兄が帰ってきてくれたからどうでもいい。



 寝起きに会えるとか、嬉しくて熱が上がりそう。




「なにか食べられるか?」


「食欲はあるよ」




 私がそう言うと、涼兄がドアに寄りかかる蛍兄を振り返る。




「蛍、なにか買ってきてくれ」


「あ? なんで俺?」


「暇そうだからな」


「だって金……」


「お前、漫画の新刊欲しがってたな。買ってきていいから、夕飯を買ってこい」




 そう言って涼兄が蛍兄にお金を渡す。さすがというべきか、一瞬にして蛍兄の表情が変わる。




「し、仕方ねぇな。買ってきてやるよ」




 我が兄ではあるけれど、なんて扱いやすいの。逆に心配になる。