「夏海のこと、頼まれてんだよ」
「誰に」
「父さんと母さん!」
「私ってどんだけ信用されてないの! 帰ってきたら文句言わなきゃ」
「お前、ウザイな」
「蛍兄ほどじゃない」
親は今旅行中。
定年になった父さんと、早期退社という形で仕事を辞めた母さんは、突然旅行すると言い出した。
何かで当たった旅行券の期限が切れるとかで、慌てて出かけて行った。
1ヶ月は帰らないからなって言い張る父さんの顔が忘れられない。
こうやって突然、出かけるのはいつものことだけど。信用されていなかったっていうのは、腹が立つ。
「夏海、きいてる?」
蛍兄が私のベッドの横で、パンをかじりながら聞く。



