「でも、彼らはダンスとかバク転とか出来ない」
「誰でも出来る」
「あたしは側転すら出来ない」
「……」
遥希は口を閉じて、恨めしそうにあたしを見た。
だけどあたしは負けない。
「遥希はドラマや映画だって出てるじゃん。
きっと藤井さんが出たら、全部お笑いになるよ?」
「……」
「遥希のおかげで、たくさんの人が元気になってるんだよ?
泉だってその中の一人だし、あたしだって……」
「お前は、本当に……」
遥希は泣きそうな顔をした。
そしてそのまま、ぎゅっとあたしを抱きしめる。
その胸にすっぽり埋まると、幸せが湧き上がってくる。
ごめんね、遥希。
いつも遥希を不安にさせてしまって。
アイドルが嫌なのは、すごく分かっている。
でも、Fとは比べないで。
遥希には遥希にしか出せない良さがある。