玄関のチャイムが鳴り、すごく嫌そうに遥希がリビングを出る。
ニヤニヤした藤井さんは、
「熱いな」
なんて笑っていた。
ひとごとだと思って!
扉が開く音がして、
「おじゃまします」
男性の声が聞こえる。
ドキドキドキドキ……
鼓動が一気に速くなる。
化粧を直す暇なんてなかった。
取り乱したあたしは、
「ふっ……藤井さん!」
なんと藤井さんに縋りつく。
藤井さんだって玄なのに!
藤井さんは碧の味方なのに!
だけど藤井さんはなおも面白そうな顔で、
「大丈夫だって。
奴は大馬鹿だから」
そう言った。
大馬鹿?
大馬鹿は藤井さんだよ!!
そして、リビングの扉が開いた時……
あたしは彼に釘付けになっていた。



