「遠くから来てくれる人もいる。
一年に一度のこの時間を、すげぇ楽しみにしてくれている人もいる。
俺、アイドルとかマジで嫌だけど……
応援してくれる人を、失望させたくねぇ」
遥希はいつも通り冷静だが、泣いてしまうのではないかと思った。
「屈辱だ。
俺のせいで、コンサートを台無しにするのは」
あたしは遥希の身体をさらに強く抱きしめた。
きっと、遥希にしか分からない、この気持ち。
あたしが何を言っても、綺麗事にしか思えないだろう。
あたしに出来ることは、ただ遥希に寄り添うだけ。
それで少しだけでも遥希が元気になることが出来たら……



