新千歳空港に降り立った。

時刻はもう深夜近い。

札幌に行くとは言ったものの、遥希はコンサートで忙しくて。

あたしを迎えに来てなんてくれないと思っていた。

ホテルでゆっくり休むべき、そう分かっているのに……





「美咲」




ゲートをくぐったあたしを、大好きな声が読んだ。

その声を聞くだけで、今は涙が溢れてきそう。

ぐっと涙を我慢して、顔を上げたあたし。

そんなあたしを見て、彼は力無く笑った。





「まさか本当に来るとはな」





自虐的に微笑む彼は、アッシュのウィッグと、知的な眼鏡をかけている。

その顔は、やっぱり美しい。

……美しくて儚げで、砕け散ってしまいそうだった。

そんな遥希に、両手を広げて飛びついていた。