「なぁ、美咲ちゃん」
藤井さんがあたしを呼び、不覚にもどきりとした。
なんだか難しげなその顔が、玄みたいに見えたから。
だけど、藤井さんはやっぱり藤井さんだ。
「悩む遥希を見守る美咲ちゃんも辛いだろうけど、今が踏ん張り時だからな」
「はい……」
「遥希はきっと、スランプを克服出来る」
「はい……」
なんだか藤井さんの優しさに泣けてしまいそう。
遥希のしんどそうな顔を見るたびに、あたしも張り裂けそうな思いと戦っていたから。
出来れば、変わってあげたかった。
バク転が出来ない罪悪感と恥ずかしさを、全て受け止めてあげたいと思った。



