「チンカス……悪いな」
遥希は静かに告げる。
平静を装っているが、あたしには、遥希が泣いてしまうのではないかと思った。
「あー、そうそう、遥希君」
隆太さんは思い立ったように遥希に言う。
「蒼君が言ってたんだけど……
ちょっと来てくれる?」
そう言って、おもむろに遥希を掴んで出て行ってしまった。
蒼さんが何を言っていたんだろう。
ファンとしてすごく気になる。
だけど、現実を見ると、そんなことを考えている暇なんてないことに気付く。
隆太さんと遥希が出て行ってしまったスタジオには、あたしと帰る準備をしている陸さんだけが残されたのだ。