「あの……」 遥希に伝えないといけないのに、なかなか言葉が出てこない。 「今日は早く帰って来れたんだ」 「あぁ。また夜に出ていくけど」 遥希はいつも通り、低くて落ち着いた声であたしに告げる。 この声が大好きだ。 この声であたしを呼んで愛してくれる。 「映画の撮影?」 「いや、コンサートのレッスン」 「みんな来るの?」 「それぞれ忙しいから、無理な奴もいる」 「そうなんだ」