そんなあたしを、鬼のような顔で睨む遥希。
本気で怒っているのか。
望むところだ、あたしも怒っている。
映画のことだって知らなければいいものの、いちいち報告するんだから!
そんなことを考えながら……
悲しくなった。
遥希が綺麗な女優と、濃厚なラブシーンをするなんて。
例えふりとはいえ、あたしの大好きなあの腕に、別の女を抱くなんて。
「そんな顔するんじゃねぇよ」
遥希の声で我に返った。
「誰のせいよ?」
突っかかるあたしに、複雑な顔の遥希は言う。
「冗談だ。恋愛物じゃねぇよ」
その言葉に心底ホッとした。
やっぱりあたしは駄目だ。
遥希と付き合うということは、そういうことも認めるということなのに。
嫉妬に狂って、大人になれないあたしがいた。



