そんな事よりもライアの怪我が気がかりでならない。何とか医務室から廊下へと出なければ。唯ならぬ雰囲気のハリに息を押し殺しながら後退るもじりじりと間を詰められる。更に壁際に追い込まれ、退路は完全に経たれてしまった。

「ハァ…。せっかく頭痛も耳鳴も無くなって平穏な日々を過ごせてたのに、またこれに悩まされるなんてうんざり。鈴蘭もそうでしょ?」

「じゃ、じゃあ。やっぱりこの酷い目眩と、この首輪飾りって何か関係してるの?」

 この問いにハリは一瞬固まるも、吹き出した。

「アッハハ! 今更でしょそんなの。それに、その度にいちいち君の記憶を消すのも面倒なんだよね。もういっその事外してしまおうと思って。だから協力してよ、鈴蘭」

 外し方すら分からないのにそんな事出来るのだろうか。しかしハリの瞳は本気だ。

(ふたりで協力すれば、外せるの…?)
「協力って?」

「言ったよね。次にこの〝報い〟が発動したら僕は君の事を容赦なく殺す……ってね。まさかそれも思い出せない?」

「……!?」

「ふぅん、哀れだな。記憶を弄られてる事さえ覚えていないなんて。まあ消したのは僕なんだけどね」

「わたしの記憶を消して、ハリさんは何がしたいの?」