「おい、そこの次男。
うまく言ったつもりか?
カノジョの生業で、
その足元見てんなら、テメェ、
とんだ計算違いだぞ。

彼女は、時代が時代なら、
時期藩主だよ。ウチの方が、
とてつもなく格下だ。

家捨てて、我が人生を歩んだ
…“一度、切り結んだら、
死ぬまで降伏は許さん”…が
信条なヒトなんだぞ。

お陰で、実家からは
勘当されて絶縁状態だがな。
そうじゃなきゃ、本来、
うちみたいな、成金ヨロシクな
家柄で、結婚できるとでも
思ってんのか。」

…流石に、親父は、既に
調査済みとみえるな。

「…龍起、どうしよう…?」

知るか!ボケが!!

…ここにいる、誰よりも
真っ青じゃねぇか!!

テメェの嫁くらい、
テメェが操縦しろ!

「しかし…困りましたね。
あの方がそんな家系の出とは。

…八方ふさがりですね。」

眉間を指で押さえながら
我が社の秘書が
溜息混じりに漏らす。

…まぁ…普通の興信所じゃ
たどりつかねぇよ。

相当遠縁の親戚に、
養女にしてもらって、
日本で2番目に多い苗字を
名乗ってんだからよ。

…あんな派手な、
元の名になんぞ
普通は辿りつかねぇよ。

「ただの八方塞ってんじゃ
ないですよ。ありゃあ、
本気でケンカ受けて立つと
宣言しましたからね。」

そう言って、
よろめきながら
蒼梧が戻ってきた。

「まかり間違って、彼女の
本家が…実家が、この話を
聞きつけてでてきても
おかしくない話ですよ。

たとえ、勘当したって言っても
実の娘、次期当主ですよ。
そのプライドを踏み躙られたも
同然ですからね。コレは。」