重厚な扉がスッと
音もなくしまり、
気まずい空気が
より、濃厚になった。

「お義母様…演技が
真に迫りすぎたのでは…」

「そう?そんなに
上手にできてたかしら?」

…1人、反省の見られない
人間がいる様だが。

「何よ、龍起。ほんのチョット
からかっただけじゃない。」

…年甲斐もなく
拗ねてんじゃねぇよ。

「おい…テメェら…
この不始末、どう落とし前
つけてくれるつもりだ。」

これだけの人数が
誰とも目を合わさず
それぞれが、明後日の方角に
目線を彷徨わせている。

「ぁあ?!なんか
応えろや?!」

数十年ぶりにブチ切れた俺に

「龍起!!なんて
口の聞き方なの?!」

取り繕うかの様な
母親の叱責の言葉に

「黙れ、ババァ!!」

更に、苛立ちを募らせる。

義姉に到っては、これまで
隠し通してきた俺の本性を
暴露したせいで、青ざめている。

でも、その位、
怒り狂うだけの理由はある。
やっと、気持ちを通わせた相手だ。

しかも、カノジョという人は
興味本位でやらかした
コイツ等の、結婚反対プレイを
甘受してくれるタイプではない。

刺し違える程の気構えで、
挑んだというのなら、
話は別だが。

こんなクソな茶番を
許してくれるタイプではない。

「龍起、母さんも悪かったと
思うが…うちに嫁にくるなら、
我家について、少しは、学んで
おくべきだったろうし、
向こうに折れてもらう様に
説得してくれたらどうなんだ?」

は?滅多に合わない次男よ。

ここぞとばかりに折衷案でも
出してきているつもりか?

カノジョを
甘くみるんじゃねぇよ。