「おっ前!!
何考えてんだよ!?」

ハンドルを握るうち、
冷静になったのか、さっきまで、
私の怒りに蹂躙されていた
オトコが怒りをぶちまける。

“蒼梧”って、
龍起さんが呼ぶから
そう呼んじゃったけど…

仲が良い訳でもないから
普段、名前で呼ぶことなんて
ない人なんだけど。

その男が半ギレで、
モノ申している。

「奥様怒らしてどうすんだよ?!
あんた、結婚認めてもらわないと
いけない立場なんだぞ?!」


うるさいわね。
私の想いは、さっき吐露した全てよ。
わざわざ、針の筵に、自分から
ダイブなんてしないわよ。

それも、口下手なのは
知っているけど

「肝心なタイミングで
対処も出来ないんじゃあ…」

そんな男と、家族の反対のある所へ
わざわざ嫁に行くとか無いわよ。

「アンタは知らないだろうけどな。
あの奥様は、奇抜で手に余るけどな、
桐生のブレインなんだよ。

新事業なんかの原案は、ほぼ、
あの人の思いつきが形になってるんだ。
奥様を庇っても、誰もアンタなんて
見向きもしないんだぞ。
あの人を怒らせてしまえば、
アンタの居場所なんぞ
桐生で無いんだぞ。

戻って、詫び入れろって。
今ならまだ、…
…間に合うかなぁ…?」

最後、不安そうに言うな。

何で売られた喧嘩にこっちが
詫びを入れなきゃなんないのよ。

それに…

「別にいいわよ。今の内に
色々分かって清々したわよ。

…つうか、そもそも
なんで結婚する事になってんのよ。
私、聞いてないわよ。そんな話。」

「はっ?!」

そう、返した私に、奴は
ブレーキを踏んで、こちらをみた。