「ねえ。」


そう呼びかける。


「ん?」


思いを吐き出せたのか
随分スッキリした顔を
している。


「貴方は、素直じゃないの?」

「は?」

不思議そうな顔するのね。

「貴方は、きっかけから
貴方の思いに至る結論まで
理路整然と説いてくれたけれども。」


「キミの気持ちを考えてないと
言いたいのか?」


自嘲的な笑みを、その唇に
浮かべて言う。


「違うわ。私が
言いたいのはね。」

この人に、私の言いたい事が
正しく伝わりますように。

「お金が大事な事も、
結婚に価値観や条件の合致が
必要な事も、わかっているの。
そんなお付き合いも縁談も
ある所には、あるものね。

でも、今は違うでしょ?」


意図を読み解こうと
難しい表情を浮かべる
初恋を拗らせた運転席の
オトコには、もう一押しが
必要な様だ。



「どうして、告白してくれて
いるのに、一言“好き”って
言ってくれないの?」



ねえ、これで、私の
本音も分かる?


それとも、私からも
言葉で伝えるべきかしら。