スムーズな運転テクニックで
連れてこられたのは、近場の
小洒落た観光スポットだった。

ここへ来るまで、一切の
会話は無かった。


彼は、エンジンを切って
一瞬、何かを考えた様だった。

「デートじゃないから
ここで話してもいいか?」

その提案に、御尤もと
頷き同意する。

「単刀直入に言う。
俺は、マーケティングに
出掛けた時に、たまたま
君を見かけて、一目惚れ
したんだ。」

彼は、そう話し始めた。
どうやら大層なセレブ出身らしく
話中、どん引きするような
部分もあったのだけど。

「そうまでしても、
キミの事が欲しかった。
初めて誰かを好きだと
思ったし…

好きになった相手から…

君からも好かれたいと…
愛されたいと思ったんだ。」


そこまで告げて、彼は黙る。


この人は、学生の起業に
銀行から融資を貰えるほど
恐らく有能な人だ。

事業内容とか詳しく話して
もらっても、残念ながら
私には理解ができない。

きっと、先程の話中の
コンペでも、ズバ抜けた
プレゼンをするのだろう。


それなのに…

どうしてこんな簡単な事に
思い当たらないの?