「龍起。」


背後から、秘書が呼ぶ
声がする。
業務中に、アイツが俺を
名前で呼ぶなんて珍しい。

振り返らず、唯、
歩みを止めれば。

「そのムスメ、男の影は
ありませんよ。ちなみに、
既にキャンセル済みですが、
コンパに参加予定でした。」

「げっ!!!!」

と、超有力情報と共に
隣から肯定するかの
反応を得た。


「わかった。
今日中に決着をつける。」


隣から不安気な眼差しが
こちらへ向けられる。


「酷い事をしようって
訳じゃない。ただ、俺も
いつまでも夢現でいられる
立場じゃなくてね。
ハッキリさせたいだけだ。」

愛車の助手席側の
ドアを開ける。


「だから、乗って。」


そう促せば


一瞬、躊躇をみせたけれども
カノジョは大人しく
助手席に乗り込んだ。