…ああ、ダメだ。

何もやる気が起こらない。

急がなければ、プロジェクト
コンペのためのプレゼンも、もう
間際に控えているというのに。


「あれ、龍起は?」


「執務室です。」


秘書室にヒトが来た気配がする。
今は、押印すらやりたくない。


「まだダメージ食らってるの?(笑)」

「ええ。執務室に引き篭もって
仕事にも支障が出てますよ。
そろそろ切り替えて頂かないと。」


秘書の容赦なくぶったぎる声を
聞きながら、机に突っ伏す。

…初恋だったんだ。

自分から、誰かを口説いたことなんて
無かったんだから。
経済的バックボーンまで、大公開
した挙句、バッサリ拒否されるとは。

少しは落ち込ませてくれ… 


「龍起は、相変わらず
見掛け倒しだな(笑)
あの女の子には、
クビ洗って待ってろって
啖呵切ってきたんだろ?」

「ええ。見掛け倒しも
いい所ですよ。とんでもなく
シャイですから。副社長は。
こんなことなら、見かけ通り
ハーレムでも拵えてくれた方が
どれだけ、業務が順調に進むか。」


“見かけ通りハーレム”って
俺の見たくれは、どれだけ不純だ。