「ああ…!!!
なんで逃げんだよ?!」


この方法だけは取りたく
なかったのだが…

自らの大手警備会社非常勤
役員という立場を職権濫用し、
彼女の勤務先の商業施設と
主なこの近辺の通勤経路を
割り出し、今に至る。


「追うな。止めとけ。」

「お前、絶対
キャッチセールスと
思われたな。」


付いて来なくていいのに
秘書を筆頭に弊社役員共
…つまりは、学生時代の
友人達が付いてきて
このザマだ。


「お前たちが一緒だから
逃げられたんじゃないか。」

「お前一人でも、あの子は
逃げてるよ。しかし、見事に
警戒されてるな。龍起。」


「諦めろ。副社長。」

口々に好き勝手言いやがる。

そんな簡単に始まってもいない
モノを、諦められるなら
最初から、こんな格好悪い思いを
して、親父に頭を下げて手を煩わせ、
笑われて、情報を入手していない。


こうなったら…

直接、店に行ってやる。


…こんなこともあろうかと
対象当該施設には既に外商登録済みだ。


形振り等、構っていられない。
何とか顔を合わせて話したい。
その機会を得たい。