―やっさんものりこさんも多分気付いてたんだ。 あたしとアキラが別れたって事― 「あのバカ息子の顔も最後に見たかったな… のりこ、俺はお前の事幸せにできたのかな? 俺は幸せだった、ありがとな」 と、やっさんが小さい声で言った。 「もちろん幸せでしたよ」 と微笑むのりこさんの顔を見ると、笑顔でやっさんは目を閉じた。 しばらくして、メトロノームのように刻まれていた音の間隔が広くなり、刻まれなくなって一定の音が響いた。 耳障りな音の中、やっさんの顔だけがとても安らかだった。