職場に着くと昨日に引き続いてざわざわしている中で「寺田さんも関わってたんだって?」との声を耳にした。

 何に関わっていたんだろう。癒着の方なのだろうか…。

「寺田さんも部長と同じ大学出身らしいじゃない?
 寺田さんの方が熱心に部長を誘っていたらしいよ。
 で、部長が内部告発したとか、なんとか…。」

 どこまで本当か分からない噂が口々に話されていた。

 席に行くと南田が座っていた。
 安堵して息をつく。

 今朝のニュースにも南田の名は上がっていなかった。
 関わってはいなかったのだろう。

「おはようございます。」

「あぁ。おはよう。大変だったな。」

 いや…私は心配ではあったけど、大変なことは何も…。

 そう思ってもそれを口には出せずに、華は黙って席に座った。
 そんな華に南田から資料が渡された。

「一昨日が全て潰れてしまった。
 僕らの仕事は認証機械とは無関係だ。
 よって納期は端的に言っても困難極まりない。
 満身創痍になろうとも完遂する必要がある。」

「あの…午前中は…。」

「寝ぼけているのか。
 飯野のじいさんにはもう伝えてある。
 君も力が及ぶ限りは全力を尽くせ。」

 1日ぶりの難解な言葉に頭がついていけないけど、たぶん協力して仕事を終わらせよう。
 そのために飯野さんの教育は今日はお休み連絡済みってことかな?

「理解したのか?
 理解したのなら四の五の言わずに仕事を進めろ。」

 う…私は何も言ってない!

 そう心の中で憎まれ口を叩いても、難解な言葉をかけられても、華は嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 また南田さんと仕事ができて良かった。
 そんな気持ちだった。