年の瀬も迫ってきた今日は忘年会だった。

 部署に女の子が増えて男性社員は張り切っていた。

 帰り支度をしながら横目で南田を観察する。
 パソコンを操作しているマウスの手に触れたい衝動にかられるのは、何も今日だけじゃない。

 せめてマウスを操作していない腕の服の端だけでも、そっとつまめたら…。

 はぁ。すっかり、変態まっしぐらね…。

 苦笑いして「お先に失礼します」と南田に声をかけた。
 こちらを見もしない「あぁ」に毎度のことながら胸がチクッとした。

 「一緒の宴会場に行くんだから一緒に行こう」なんて前なら行ってくれたかな?
 ううん。南田さんだもん。難解な言葉を発するはず。

 そして今は…。

 こんな気持ち、気づかなければ良かった。


 忘年会に向かう途中。華の元ペアの内川と南田の元ペアの加藤が仲良く歩いているところを目撃して、胸を痛くさせた。

 内川さんがどうとかではなく、南田に言われた言葉を思い出してしまったのだ。

「君が内川さんと付き合っていたかもしれないのにな…」という言葉を。

 南田さんは結局のところ、やっぱり私をからかってただけなのかな。
 それにまんまと翻弄されただけで…。

 嫌がらせがあったとしても、それはもう収まっている。
 なのに簡単に契約を解消できるほどのことだったのだ。

 それとも契約解消のいい機会だとでも思ったのかな。

 華はまた答えが出ないまま、忘年会が開かれるお店へと入っていった。
 お店のすぐ近くにある認証の機械を目の端に捉えて、ため息をつきながら。


 飲み会はみんなと仲良くなれるいい機会だと思いつつも華は苦手だった。
 お酒が飲めない華は断るのも気を遣うし、何より酔っ払いのノリについていけなかった。

 ふと視線を移すと南田は部長と何やら話し込んでいる。

 女の子じゃないってところが南田さんらしい。
 そこまで思って首を振る。もう関係ないじゃない。

 嫌気がさした華は宴会場を抜け出した。