華は自分がとんでもない人を好きになってしまったのではないかと思っていると、ふと見たことのある人が視界に入った。

 女の人が座っていた背中側にいたのは南田の友人でSEだと言っていた宗一だった。

 宗一は女の人が帰っていくのを確認してから華に話しかけた。

「良かったね。思いの外、丸く収まった。」

 丸く…収まったのかな?
 まぁ南田さんへの嫌がらせは無くなりそうだけど。

 華がスッキリしない気持ちでいると宗一はまた言葉を続けた。

「あなたのお陰で俺の恋は成就しそうだ。」

 ウィンクをする宗一に華は唖然とする。

「南田さんをやめて俺にしろって言う人って…。」

「そう俺のこと。」

 なんなの!?やっぱり変人の南田さんの友達はやっぱり変人ってこと!?
 だってここにいたってことは、つけてきたっていうか…そういうことでしょ?

「お礼にいいことを教えてあげる。
 湊人のこと頭良くて難しい言葉を使うし理解できないって思ってるだろ?」

 何を急に…。

「それはあれだけ理論武装されたら…。」

「ハハッ。理論武装でもなんでもないよ。
 あいつはただ難しい言葉で自分を守ってるだけ。」

「守って…る?」

「そう。難しい言葉で武装してるだけって言えばいいのかな?
 それを剥いだら…ハハッ。」

 武装は武装なんじゃない。
 でもなんだろう。剥いだら…。

「じゃ。南田を見捨てないでやって!」

 う…。ここにも南田さんの味方する勝手な人がいた。

 軽やかな足取りで帰っていく宗一を恨めしげな視線で見送った。