可奈の席で見せてもらった南田の出退勤の時間。

 朝はほぼ毎日のように6時には出社していて、華を半日で帰らせた日は12時近くまで残っていたようだった。
 それも全てが華とペアになってからだった。

「ね。華ちゃんに残業させないように南田さんが頑張ってるでしょ?」

 可奈は自分のことのように得意顔だ。

「でも…派遣の加藤さんだっけ?あの人とペアだった時は残業してないみたいでしょ?
 やっぱり私がお荷物ってことなんじゃ…。」

 自分で言って心がしおれてしまいそうになる華に可奈は思いもよらない言葉をかけた。

「そんなの華ちゃんに期待してるからに決まってるよ!
 だいたい派遣の子は社員のお手伝いだけど、華ちゃんは社員だからそもそもが違うの!」

 そうか…。そうかもしれない。それでも南田にしたらお荷物はお荷物だろう。

 そして華は一番不思議に思っていることを口にした。

「だいたいどうして南田さんは朝早くに来てるのかな。
 なんだか私に残業してるのをバレないようにしてるみたい…。」

「そりゃそうでしょ!もう!華ちゃん分かってないんだから!
 だから私が南田さんの味方をしたくなるんだよ〜。」

 何を分かってないって言うのよ…。

 可奈の南田びいきに少しうんざりして続きを待つ。

「残業してるの華ちゃんに知られたら、華ちゃんが悪いなって思うでしょ?
 そう思わせないために決まってる!」

 そんなわけ…そこまで私のこと考えて…?だとしたらもっと仕事を優しく教えてくれたらいいのに…。

 いやいや違う違う。これは可奈ちんの想像上の南田さん!

「はいはい。可奈ちんの南田愛は伝わったから。」

「もう!やっぱり華ちゃんは分かってないんだから!!」

 またプリプリする可奈の席から自分の席に戻る。

 やはりまだ昼休みなのにパソコンに向かう南田が席にいた。
 無表情な視線がチラッとこちらに向けられた。

「不毛な雑談をする暇があったら飯野のじいさんから修学したことを復習するんだな。」

 不毛かどうかは南田さんに関係ない!ちゃんと聞こえないように話してるから内容知らないはず。
 …というか南田さんの話だし!

 華は可奈が言うような心遣いを南田にされているなんて到底信じられなかった。

 ここ2、3日、ヘルプデスク…というか飯野に基礎を教わっただけで、ずいぶんと南田が伝えようとしていることや、仕事内容も理解することができた。

 そこから仕事ができるかはまだまだだけれど、理解できるようになったのは大きな進歩だった。

 そのお陰で手厳しい南田の指摘を受けずには済んでいたが、かと言って南田が優しいわけでは無かった。