「…驚愕の事実だ。
 この設計を君がしていたとは。」

 華たちの会社は車関係の部品を作る会社。母体は自動車メーカーだ。

 ここ最近は車のみをやっていては企業として生き残っていけないと、色々な仕事をするようになっていた。

 キス税が施行され、その機械も華たちの会社が開発から製造を携わっていた。
 それを華は設計していたのだ。

「なんとも皮肉だな。」

 ポツリとつぶやいて南田は華の隣のデスクに腰をかけた。
 華だってそう思っていた。

 あの忌々しい機械を自分達が設計しているなんて。

「なるほど今の機械をこう設変するのか。
 使いやすくはなるか…。」

 設変とは設計変更のことだ。
 今の使っている機械をより使いやすくするために何度か改良していた。

「理解した。ここはこうしたらこうじゃないのか?」

 南田のアドバイスと指示は分かりやすく、悩んでいた問題点もすぐに解決した。
 あとは実際に変更するだけだ。

「もう今日は遅い。明朝から取り掛かれば間に合うはずだ。」

 この人…普通に話せるんじゃないかな。
 説明の言葉は分かりやすかったし…。

「おい。穴が開く。」

「え?」

 焦点を合わせると南田とバッチリ目が合ってしまった。

「顔に穴が開くと言っている。」

 指摘されて、ぼんやり南田の顔を見ていたことに気づく。
 穴が開くほどに見ていると言いたいのだろう。

「ごめんなさい。ボーッとしちゃって。
 仕事のアドバイスありがとうございました。分かりやすくて助かりました。」

 あぁ。と小さな返事が聞こえ、南田は帰るようだった。
 華もそれに続いた。